254  長干行二首之二 崔顥

君家何處住 君の家は 何処(いずこ)にか住(じゅう)す
妾住在橫塘 妾(しょう)は住して 横塘に在り
停船暫借問 船を停(とど)めて 暫(しばら)く借問す
或恐是同鄉 或いは恐る 是れ同郷ならん
家臨九江水 家は九江の水に臨(のぞ)み
來去九江側 九江の側(かたわら)に 來去す
同是長干人 同じく是れ 長干の人
生小不相識 生小にして 相識(あいし)らず

Jūn jiā hé chù zhù
Qiè zhù zài héng táng
Tíng chuán zàn jiè wèn
Huò kǒng shì tóng xiāng
Jiā lín jiǔ jiāng shuǐ
Lái qù jiǔ jiāng cè
Tóng shì zhǎng gàn rén
Shēng xiǎo bù xiāng shí 

あんた お家(うち)は どこにお住まい?
あたしは あの「横塘」に 住んでいるの
小船を寄せ停まったのは お尋ねしたいからよ
もしかあんたも 同じ郷(さと)のかたじゃない?

たしかにわしの生れは九江の岸辺
水辺を往ったり来たりがわしらの暮らし
同じ長干と言われても
幼いころから浮き草稼業、とんと覚えはないわいな

『長干 二首』というが、
歌問答の二首は「ふたつで一首」の作品だ。
最初のを女性が唄いもうひとつを男性が唄うという
想像をしてみれば二首の歌がかもし出す雰囲気は
遊里のそれに近くなるだろう。

長干は南京の町の名。水上交通の拠点、
それゆえ商人の行き来と遊女の存在があった。

横塘は地名で南京西南にあり江口から秦淮にかけての築堤。
九江は今の江西省九江市。

長干行は楽府題で行は形式の名。

長干は日本の古典文芸でいうと江口・神埼にもあたるのでしょうか。

この楽府詞は俗謡風の対話形式を借りているのでしょうか。

客になりそうな男の商人の乗る船へ声をかける女
客になる気は十分ありながら一度はとぼけて
そっけない素振りをして応える男
そんな情景が眼に浮かんでくる風俗詩です。