042  子夜四時歌冬歌 李白


明朝 駅使発す
一夜 征袍を(じょ)
素手 鍼(はり)を抽(ぬ)けば冷やかなり
(なん)剪刀(せんとう)を(と)るに堪えん 
裁縫して遠道に寄す
幾日か臨に到らん


夜が明ければ 
駅使が発って荷を運ぶ
今夜のうちに 
袍に絮(綿)入れしましよう
ひと針ごとに 
素手は冷えてきて
はさみも
持てないくらい
縫い目も新たなこの服は 
遥か道遠く
臨洮の夫まで 
幾日かかって届くやら


子夜は歌曲の名でそれが形式の名になった。
戦地に夫を送り出した妻の閨怨詩だ。
四時つまり四季の情景として歌うという趣向が出来ている。

これは李白の四時歌の冬。四首目だ。
征衣(旅の衣装)の中では綿入れで、
西域の砂漠などの酷寒に耐えるためのもの。
定期の駅便に間に合わせようと夜なべする妻の
運針する白い手に夜寒が迫ってくる
それにつけてもと思われる
遥かな遠い道の果て
夫の居る処のなんと遠いことか


寄す、は送ること。
手紙を寄すが多いがここでは荷物を指す。
もちろん手紙も入っているのだが。
余談だが関西では子供同士で仲間に入れてと頼むとき「寄せてぇ」と叫ぶ。
関心の対象に物か自分の一部が到達するのを寄せると言うのだ。波が寄せる。
子供は浪の様に友だちのところへ寄せて往きながら「寄せてぇ」と叫ぶのだ。
集める、集まっていることをも寄せると言う。寄り合いは或る点へ寄せて来るから。
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